Aさんは無口な方ですが、会社で仕事の必要事項は問題なく話すことは出来ます。しかし、プライベートだと特に無口になってしまいます。頭の中では言いたいことがたくさんあっても、それを口に出すことにプレッシャーのようなものを感じてしまうのです。
Aさんのトラウマは子供の頃に「おしゃべりだ。うるさい!」と怒られたことが理由でした。特に男性は「男のくせに」がその前につきます。一番目の子供よりも二番目の子供の方が、一番目の子供よりもよく話します。それは親と兄姉の会話を母親のお腹にいる時からじっと聞いているためです。そのような知識がない親は「お兄ちゃん(お姉ちゃん)は幼い時は静かだったのに…」と比べてしまう親もいるでしょう。
3,4歳の子供の「ねぇねぇ、ママ、きょうね、ぼく、xxxxだから~xxx それでね~ xxx」と他愛もない話をするのを毎回、優しく受け止めることが出来ない母親が多いのが実情です。家事、育児、パートの仕事、その上にその子の他にもまだまだ手のかかる上の子がいるのです。その状況でまだ若い親には精神的、肉体的にはキャパシティーがありません。そんな時に出てくる一番の言葉は「うるさいわねぇ」「ちょっと静かにしていてね、いい子だから!」です。
子供が「こんな楽しいことがあったんだよ」と喜びを分かち合おうとしたのにそれを断ち切られてしまいます。それが毎日続けば、自分の話は面白くないんだと拒絶されたように感じ、徐々に話もしなくなり、自分の空想の世界に入って行きます。静かにしていることが(話さないことが)いい子だと潜在意識に記憶されていきます。
そして、Aさんが中学生になった時、親に時間と心の余裕がやっと出来た頃に今度は「黙ってないで、せっかく家族が揃っての夕食なんだから何か話しなさいよ。何で、アンタはそんなに無口なの?小さい時はおしゃべりだったのにねぇ~」などと言われたりして、それがまた話すと言うことに対するストレスになったと、トラウマを取り去った後は笑い話のようにAさんは話してくれました。